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「疲れた。」
どさ、と勢い良く腰をかける。
うざったいばかりの帽子を、投げ捨てるかのように脱ぎ捨てれば、真っ黒の髪が額にふわりと降りた。
「お疲れ様です、壬雨様。」
不機嫌なオーラを放つ壬雨の傍らに、花が咲いたような笑顔を浮かべた女が跪き帽子を拾う。
壬雨は一目も女に目を向ける事なく、だらりと行儀悪く肢体を伸ばした。
「見てたのか?」
「はい、遠くからではございますが。」
ふぅ、と深く息を吐いた壬雨の身体は更に椅子へ沈む。
「金の亡者がわんさか居ただろ。」
「まぁ、そう言わずに。」
「お前まで庇うつもりか。」
ち、と舌打ちをした壬雨は、組んでいた足を組み直し、ちらりと女の方を見る。
ぱ、ぱっ、と帽子についた埃を払っていた女は、視線に気付くとまた笑みを浮かべた。
「壬雨様は誰よりも民を大事にされる。」
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