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壬雨は不機嫌な表情を浮かべたまま黙り込んだ。
民を何よりも大事にされる。
このたった一つの言葉で、壬雨を黙らせるには充分だった。
こうも簡単に言いくるめられるとは。少しつまらなさそうな表情を浮かべると、女は笑みを深める。
「この祭で、民には貴方の存在を知る事になるでしょうね。
しかし、大変なのは今からです。
貴方様は一国の王に就かれた。その若さで。
つまり、今か今かとその首を狙う者も居るのですから…どうか、お忘れなきよう。」
淡々と喋る女に「ふん、この仕事女が。」と、壬雨は唇を尖らせた。
そんな彼に笑い声を洩らした女は、「これがわたくし、菊の役目でございますから。」と言って退けた。
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