第一章 邂逅

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支払う金額が決まってから、俺はぼんやりと自分の懐事情(ふところじじょう)を考えていた。 自宅に戻れば、潤沢とは言えないまでもいくらか蓄えはあるはずだ。 しかし、それでももちろん貧乏であることに変わりはない。 だからこそ、俺としては今回のような散財は非常に心苦しいわけで……。 酒と煙草を少しの間止めてみるか、と間違った考えがついつい頭をよぎってしまう。 無論、俺はそれをすぐに否定した。 駄目だ。それだけは絶対に認められない。無理矢理にでも費用を捻出してやる。 生きがいのない人生なんて人生じゃないはずだ。 眉間のしわを揉みながら思わず小さなため息を漏らしてしまう。 「あとで店に金を持って行ってやる。それでいいか?」 「ああ構わねえ」 短いやり取りのあと俺は両手をポケットに突っ込んだ。 「んじゃあ、そろそろ行くわ」 「おう。そういえばどこに行くつもりだったんだ?」 「サウスの近くまでだよ。距離はあるがあそこは煙草が安いからな。足運ぶくらいわけねえ。それと……。今しがた一つ気になることもできちまったしな」 「なんだ?」 「面倒事だよ」 ジェイコブは怪訝な顔をして眉をひそめる。 なんとなく察しがついているようだ。 その上で関わり合いを持ちたくないからか、深く尋ねてくるような真似はしない。 「お前つくづくついてねえな。同情するぜ。もしかしたら(たた)られてんのかもな。可哀想に。……しっかしまあ……だからと言って、値引いたりしてやることもねえけどよ」 俺は苦笑した。 そしてその場を後にした。   .
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