第一章 邂逅

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どう考えても優れものだ。 けれどもそれが、いとも簡単に壊れてしまったのだ。切なくもなる。 しかもこのシルバークロスは手に入れたばかりの品ときた。 うなだれる他あるまい。 確かにこれは消耗品で、徐々に使えなくなっていくものではある。 だが、こんなにも早く駄目になるなんて……。こんなこと初めてだ。 異様な熱を感じたあのとき、火傷する以上に熱かったのを覚えている。 どうやら対象はかなりの使い手であるらしい。 しかし、クロスが壊れてしまった今、相手が魔力を発したとしても、もう捕捉する術はない。 今はただ、地道に先程の反応があった場所の近くを探し回っているだけ。 けれど、相手が何者なのか、どういった意図があるのか。その事について俺としては確認しておく必要がある。 危険の可能性がある以上、本来護衛としては首長の近くで待機しておかなければならない。だが、幸いなことに首長の護衛は俺の他にもいる。 俺の役割は状況に応じて自由に動くこと。護衛に任命されたときから首長直々にそう教えられてきていた。 だから……というか、その言葉を都合良く拡大解釈して、俺はふらっとこのマリンランドを離れることがよくある。 無論、もう一人の護衛からは自由に行動しすぎだとの批判を受けるが、今のところ全て無視している状況。 ともあれ、こうやって危険の種を先んじて()んでおくことは、首長にとっても、もう一人の護衛にとっても、俺にとっても有意義であるはずだ。 そしてなにより、面倒事が拡大するおそれを防げるという大きな大きな利点がある。 ならば多少の行動は押してしかるべき。損して得取れの精神だ。 .
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