第一章 邂逅

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順当に考えれば、マリンランドの先住民が適任であろう。 けれど、今現在、この国の大部分を支配しているのは彼らではない。 支配しているのは、両国の犯罪者共である。 ふざけた話だ。 軍隊が撤退してすぐに両国の犯罪者共はこの島を目指して亡命しはじめたのだ。 軍事不介入を決めた以上、マリンランドに逃げ込まれれば両国は手出し出来ないわけである。 加えて、無政府状態であるこの国には、取り締まる人間がいないため、引き渡すことも難しい。 結果的に罪人共は免罪符を手に入れた形になる。 両国にとっては頭の痛い問題だ。 おかげでこの国は今、ろくでなし共がこれでもかと言うくらいに集まって来ていて、ほとんど吹きだまりと化している。 治安最悪の犯罪国家。 そう呼ばれることも多いが、正確に言うとそれは誤りである。 状況はもっと酷い。 法整備が進んでいないせいで、この国において、そもそも何をもって犯罪と定義するのかすらも定まっていないのだから。 ともあれだ。 この国は荒くれ者達の溜まり場。 当然、そんな性質(たち)の悪い連中が集まれば、いくつかの派閥やら組織やらが出来上がるわけで……。 現在、この国では、親ウォルタリア派を称する派閥と、親ミハイロフ派を称する派閥との間で抗争が繰り広げられている真っ最中。 いわゆる代理戦争である。各々両大国からのバックアップを受けながら、境界線を書き変え合う毎日。 飛び交う銃声や道端に転がる死体なんかは、それなりによく見る光景で、いちいちヒステリックに騒いでいたらきりがないほど。 形こそ違えど、結局のところこの戦争はまだ終わっていないのだ。 .
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