第一章 邂逅

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煙草をくわえながら桟橋(さんばし)を歩き、港を通り抜けて近くの市場に出る。 この市場にも特別用はないから、足早に歩き抜けるつもりだった。 が、 「よう、レオ。調子はどうだ?」 呼び止められる。その先に目をやると大男が笑顔を浮かべていた。 右手で紙袋を携えつつ、もう一方の手を挙げてこちらに合図を送ってくる。 レオナルド。それが俺の名前である。レオと呼ばれることの方が多い。 誰かに自分の仕事のことを説明するときには冒険家もどき、もしくは、この街の首長の護衛をやっていると名乗る。 そして今回尋ねられた調子というのは、その前者を指していた。 「からっきしさ、ジェイク。ほとんどハズレばっかり。相変わらずの貧乏だよ」 「はっ、そいつはお前が悪い。普段の行いが悪いからそうなっちまうんだよ。周りに対する感謝が足らねえからな、お前は。そこで一つ、心優しい俺様から貴重なアドバイスだ。とりあえずは俺相手に態度を改めるところから始めてみるといい」 ジェイコブは銀歯を光らせ、ニヤッと悪人らしい笑顔を作る。 この男は俺がこの国に来てすぐに知り合った男で、以来かれこれ付き合いは三年になろうとしている。 とにかく口が悪い、というのがジェイコブの一番の印象だ。 歳は三十代半ばくらいか。直接訊いたことがないから正確にはわからない。 黒い髪はサイドだけ短く刈り込まれていて、アップバングされた前髪は七三分け。ジェルで塗り固められている。 (いか)つい顔に分厚い胸板。そのくせ、黒のスーツなんて着ているものだから、どこかの組織でボディーガードでもやっているんじゃないかとついつい疑いたくなってしまう。 が、一応の肩書きはわりとまとも。バーの店主だ。 羨ましいことに俺とは真逆で売り上げは好調らしい。 「そうすりゃあタダ酒でも飲ませてくれるってのか? いやあ、そいつは助かるな。なら、いくらでも手くらい合わせてやるよ。ちょうど文無しに近い状況だったんだ。いやあ、ほんと助かる助かる。さっすが天下のジェイコブ様だぜ」 .
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