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始まり――それは季節はずれの桜がひらひらと軽らかに舞い散る、ある夜のこと。
桜の花弁は満月の白銀の光に照らされ、まるでそれは雪のように静かに地面に降り積もっていた。
「どこだ……、ここ……」
「……わかんない」
二人の見目麗しい少年少女が時を越え現れた先は――幕末。
しかし二人は己が幕末の時代にいることを、知る由もなく。
「……千早、俺たち」
「もしかして……迷子?」
二人はまだ何も知らない。
物語の始まりを、己の運命を変える人々との出会いを。
そしてまた己自身が、人々の運命を、歴史を、大きく変える存在であるということを――。
月光が、舞い散る桜の花びらを、恍々と照らし出す。
この物語の始まりは、まさに、桜華の奇跡――。
……桜が起こした奇跡だったのかもしれない。
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