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2-4
ややしてひとりの老人に案内されたアルスたちが乗り込み、馬車が走りだす。
だんだん、近づいてくる。しかし窓からのぞく横顔だけではあの赤い瞳がわからない。
通りすぎてゆく。
遠ざかってゆく。
そのまましばらく時間がたち、沿道の人々がざわざわと引き上げはじめても、そこから動くことができなかった。
「セリューナ、もう行っちゃったわよ」
下から母親の声がする。
「……うん」
人垣がだんだんまばらになっていく。
あんな一瞬だけで、どうして満足して帰ってしまえるんだろう。
「セリューナ?」
「…うん」
それでも、声をかけてくれる母親がいてくれて嬉しかった。
この気持ちをわかちあうことはできなくても、そばに誰かがいてくれることが、嬉しかった。
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