13人が本棚に入れています
本棚に追加
2-5
アルスは沿道から沸いた歓声に、少しだけ眉をひそめた。
やたらと腰の低い老人が現れ、趣味を疑う派手な馬車を示された。
すぐに傍らで畏まっているレイリューンを老人に紹介し、同行させる旨を伝えた。
馬車に乗りこむ直前、沿道に目をやり、片手をあげた。木の枝に手をかけ、こちらを見つめている娘に。
あれが彼女だと断定できるものは何もないが、なぜか心配そうに見守られているような気がした。
沿道の人々と同じ視線でも、気持ちによって温度はかわるものか、と思う。
先に乗せたレイリューンが不思議そうに尋ねてきた。
「何かありましたか」
恐らくレイリューンは気づいていないだろう。
「木に珍しい花が咲いていた」
「えっ、あなたも気づきましたか!?」
心底驚いた顔だった。これは、間違いなく同じものを見ていたに違いない。
しかし、
「何をだ」
動揺を押し隠して言った。
最初のコメントを投稿しよう!