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3-3
そしてレイリューンは、アルスの心中に探りを入れるように切り札を口にする。
「一般人の往来が自由になると、セリューナも気軽に遊びに来るでしょうね」
その名前に、アルスは何も反応しなかった。
それは完璧に作り上げた静けさのようだった。
「来ないだろう。あれは、…賢い娘だ」
「なぜです?」
「長の私に近づくほど愚かではない。女が夢を描くような未来など、何もないのだから」
「でも私は、あなたにごく普通の幸福を味わってほしいと思っているんです」
重く、そう言った。
「それはそっくりお前に返してやる」
「私はあなたのお傍にいることが幸福ですから」
「……周囲に妙な誤解をされるぞ」
「……そうですね」
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