1 歓迎

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3-5  満面の笑みをたたえた壮年の男が手を差し出す。マセラ国王だった。  宝石をあちこちにちりばめた古めかしい大きなマントを羽織っている。  そしてどういうわけか、衣装の脇に縦に走っている亀裂から、白い翼が左右対称に生えていた。  作り物かと思うほど、それは滑稽な美しさだった。  アルスも手を差し出し、握手を交わす。 「ようこそいらっしゃいました。末端の国民一人一人までもが残らずあなたを歓迎します」  当の本人はどうなんだ、と言いたかったが、当然ながら口にはしない。 「イザエラの族長を引き渡して以来ですね。こうして正式にお会いするのは初めてですが」 「いや、あの時は驚きばかりで充分なもてなしもできず、申し訳なかった」 「こちらこそ。天の扉を守るために金が必要だったとはいえ、女を人質に取ったのは卑劣な行為でした」  アルスは先方から指摘されないうちに、先手を打って謝罪した。
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