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4-1
「大丈夫か、レイン」
気遣わしげに、アルスが訊いた。
「……はい、どうにか」
安心したような返事に吐息する。安堵と苛立ちとが混ざっていた。
「あの国王、何を考えているのやら」
「妻子はいるはずですよね、確か」
だが、姿を見せる様子はない。なめられているのか、恐れられているのか。
「政略だろう」
「ええ……」
不快そうに、レイリューンは国王の触れた手の甲を布で押さえた。見たくもない、といった風情だ。
「貸せ」
いきなりアルスが強引にレイリューンの手を引き、その布の上から口づけた。
「……え…っ」
驚きのあまり、レイリューンは思わず、されるがままになっていた。
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