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全身に悪寒が走る。しかし、相手に悪気はないはずだ。
レイリューンは必死に、その手の上に近づいたアルスの顔を思い浮かべる。
伏せられた目と、思いやりに満ちていたあの表情を。
「剣を持たれるからか、手はとても頑丈だ。腕も、ああ、結構いい筋肉してますね」
言いながら、手やら腕やらを遠慮なく触ってきた。
……息が苦しい。体温が急激に下がっていくのがわかる。
しかし外交的なこと、いや、自分の立場を考えると何もできない。
出口のない恐怖が、レイリューンを苛む。
「……し、失礼、ウォルフ殿。私はそういうことはあまり……」
ひかえめな抗議を声に出す。
「おや、どうしました。ご気分でもすぐれませんか?」
「い、いえ、大丈夫です。お気遣いなく…」
「横になられたほうがいい。苦しくはないですか」
言いながら、レイリューンの襟元をくつろげていく。
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