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「魔族か。好戦的で下等な生き物だな」
喉からわきあがる怒りを奥歯で噛み締めた。
こんな、戦いも知らないような男ひとり、素手で首をへし折ってやることだってできる。
今すぐ、手をのばして。
……だけど。
「会談の内容について、私に発言する権利はありません」
「正論ですね。まあいいでしょう」
ウォルフはようやくレイリューンから手を放すと、興味をそがれたようにさっさと扉の向こうに消えていった。
レイリューンは大きく吐息し、右手を自分の胸元にひきよせ、動くかどうか拳を握って、開いてみる。
思ったより自由が利くと感じ、ゆっくりと立ち上がった。
乱れた衣服が目につく。屈辱に震える手で、どうにかそれを整えた。
「……う…」
吐き気がした。この部屋にいるだけで気分が悪い。
フェシルミアさまが戻ってきたら、この不調に気づかれてしまうだろう。
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