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2 許容
秋の空はすぐに表情が変わる。高い位置にある白い雲が次々と飛来し、消えていくからだ。
ぼんやりと、セリューナはそんな空を眺めていた。
「セリューナ、もういいかげんにしなさい」
父親の声にはっと我に返り、持ち慣れた鎌を握りしめた。
「ご、ごめんなさい」
あわてて腰をかがめ、稲穂の刈り取りを再開した。
「そうじゃない。お前はいつまでそうやって魔族のことばかり考えてるつもりだ。いいかげん忘れなさい」
「……だって、仕方ないじゃない。今、天にいらっしゃるんだもん」
父親はやれやれと吐息した。
「憧れるのはいい。ただ、その先がないだろう。そのくらいわかってるはずだ」
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