2 許容

3/26
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
5-2 「だからお仕事手伝ってるじゃない! 人が必死に忘れようとしてるのに、横からごちゃごちゃ言わないでよっ」  父親が笑った。わかってるならいい、と。  ものすごい早さで稲を刈り、束ねていくその背中を見つめた。 「もうここはいいから、母さんのほう、手伝ってきなさい」 「はあい」  セリューナは鎌を布でくるみ、家に近い場所にある畑へ向かう。  そこでアルス一族の人たちに誘拐されたことを思い出しながら、殊更ゆっくりと歩く。  時々立ち止まって、また空を見上げた。  雲が切れ、薄い水色の空が広がっていた。 「レインさんの瞳と同じ色だー」  本物はもっと生き生きと輝いているけれど、この際そんなことはどうでもいい。  セリューナは気分よく、また歩きだそうとして、 「きゃああああーっ」  いきなり、叫んだ。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!