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「だからお仕事手伝ってるじゃない! 人が必死に忘れようとしてるのに、横からごちゃごちゃ言わないでよっ」
父親が笑った。わかってるならいい、と。
ものすごい早さで稲を刈り、束ねていくその背中を見つめた。
「もうここはいいから、母さんのほう、手伝ってきなさい」
「はあい」
セリューナは鎌を布でくるみ、家に近い場所にある畑へ向かう。
そこでアルス一族の人たちに誘拐されたことを思い出しながら、殊更ゆっくりと歩く。
時々立ち止まって、また空を見上げた。
雲が切れ、薄い水色の空が広がっていた。
「レインさんの瞳と同じ色だー」
本物はもっと生き生きと輝いているけれど、この際そんなことはどうでもいい。
セリューナは気分よく、また歩きだそうとして、
「きゃああああーっ」
いきなり、叫んだ。
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