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「で、父さんはホントに行かないのね?」
「……ああ」
気のない返事に母親が笑う。
その意味がわからないでいると、母親はさらに笑って「男親は複雑なのよ」とだけ言った。
「沿道で手を振るだけよ? ふたりきりで会えるわけじゃないのに」
相手が気づくかどうかさえ…、いや、厳密に言えば気づくことはないだろう。
「お前を無事に帰してくれたことだけは感謝している。だがね、そもそも人質を取ったのがアルス一族なら、感謝というのもおかしいだろう」
「…そうだけど」
両親には、一族で見聞きしたことを全て話した。
身近なひとにさえ、わかってもらえないのは辛すぎるから。
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