プロローグ

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1-3 「で、父さんはホントに行かないのね?」 「……ああ」  気のない返事に母親が笑う。  その意味がわからないでいると、母親はさらに笑って「男親は複雑なのよ」とだけ言った。 「沿道で手を振るだけよ? ふたりきりで会えるわけじゃないのに」  相手が気づくかどうかさえ…、いや、厳密に言えば気づくことはないだろう。 「お前を無事に帰してくれたことだけは感謝している。だがね、そもそも人質を取ったのがアルス一族なら、感謝というのもおかしいだろう」 「…そうだけど」  両親には、一族で見聞きしたことを全て話した。  身近なひとにさえ、わかってもらえないのは辛すぎるから。
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