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5-8
「父さん、これでよかった?」
「ん、ああ。母さん、これをすり潰して甘く煮てくれ。えっと、そちら甘いものは大丈夫かな」
「あ、はい」
「もう大丈夫?」
セリューナが顔を覗き込んできた。
彼女があの瞬間に現れてくれなかったら、どれほどの誤解を招いてしまっただろう。
「ええ、……ありがとうございます」
その言葉がやけに重く響いたので、セリューナはどうしてだろう、と少しだけ考えた。
「でも、アルスさまは何を考えてるのかしら。レインさんをこんなになるまで放っておくなんて」
「いえ…、私が、勝手に出てきてしまったので……」
「かっ、勝手に!?」
「ええ。フェシルミアさまが記者に囲まれている間、私は部屋にひとりだったんです。そこへ、ひとりの男が話し相手にとやってきて、その男が私に…、その、ある種の嫌がらせを……」
ああ、と父親が言った。
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