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1 歓迎
天の扉から王城へと続く道の両側には、すでに大勢の人々がつめかけ、この時とばかりに着飾っている庶民もあちこちにいた。
「わー、全然見えないー」
セリューナはどうせ向こうは気づかない、といつも農作業に着る簡素だが清潔な格好をしている。
すぐに追いついてきた母親も、薄くお化粧はしていたが普段とあまり変わらない。
セリューナは背伸びしたりぴょんと跳ねてみたりするが、人の後頭部が見えるばかりだった。
「じゃあ、セリューナ」
母親が少し離れた位置にある小高い木を指さす。
「……え?」
「登んなさい。あれ」
「冗談でしょ?」
「大丈夫よ。あっちのほうはほら、家の屋根に座ってるひともいるわ」
家の屋根と生えてる木では、木のほうが、はしたなさが微妙に増すような気がした。
「さすがに、ちょっとそれは恥ずかしいんだけど……」
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