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さらさらさら―――
衣擦れの音?
重い瞼を開けると、私の横で腰ほどもある長い黒髪をした人が細長い布切れを片付けていた。
・・・誰?
・・・人!!!!?
意識が一気に覚醒する。
私は布団を勢い良く剥いで、その人と反対側に飛びのいた。
・・・つもりだった。
「っつ!!!!」
体重をかけようとした右腕に力が入らず体勢を崩す。
どたっ
「くっ・・・!」
体中が悲鳴を上げた。
右肩の傷が疼く。両足は小刻みに震えていた。
「急に動かないほうがいい。傷が開く。」
手が伸ばされてきた。
びくっ
肩が思いっきりはねた。
目を固くつむる。
ぴたっ
伸ばされた手が止まった気配がした。
恐る恐る目を開ける。
「すまない。」
その人は申し訳なさそうに手をひっこめた。
「まだ安静にしたほうがいい。向こうにいるから何かあったら呼んで。」
その人は布切れをもって立ち上がった。
すらっ
「ここは開けとくから。」
そう言ってふすまの向こうに消えた。
・・・。
私は警戒してふすまの向こうをじっと見つめた。
がたっ・・・ざっざっざっ――――
どうやら外に行ったようだ。
仲間を呼びに行ったのかもしれない。
私はそう考え、じっと耳を澄ませた。
しかし話し声は聞こえず、人の気配もない。
そこで私は少し警戒を解き、ゆっくりと顔を天井に向けた。
格子からは穏やかな朝の陽射しが入る。
ここはどこだろうか。私はどうして・・・。たしか崖から落ちて・・・。
なんにしろ油断はできない。いつ殺されてもおかしくない。
だが、意思とは反して体は休息を必要としていた。
だめだと思いながらも私は睡魔に勝てずについに眠ってしまった。
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