1人が本棚に入れています
本棚に追加
◇A寮:早朝:631号室
ジリジリジリ・・・
元高等部3年生の卒業式、新しく学園生活を送り始める初等部1年生の入学式が終わり、それ以外在校生は1つ進級した。
―その数週間後。
全寮制であるバティセ学園の朝はそれぞれの寮の部屋から始まる。
部屋に鳴り響く「ジリジリジリ」とした音の正体は、2つの窓の間の壁に設置された丸い時計から発せられる目覚まし音なのだ。
生徒、教師、職業問わず新たな朝を知らせる音であった。
「・・・さん、朝ですよ」
嫌な音が聞こえなくなると、今度は聞き慣れた同い年の少年の声が。
しかし、文字通り早朝なのだから眠気に勝てず起きれない。
「・・・シードさん、起きてください! 」
次に聞こえてきたのは、焦りを含んだ叫び声だった。
「あと・・・5、ふ・・・」
「5分もありません!」
すでに中等部の制服へと着替えた浅黄色の髪の少年は、毛布で防ごうとするルームメイトの少年を起こそうとする。
喉を鳴らしながら、毛布にくるまっていたクリーム色の少年、シード・ウェースターはだるそうに自力でベッドの上で正座のような姿勢をすると、半開きの澄んだ空色の目のまま時計を見つめる。
ギリギリの角度で時計の長い針を見ると・・・。
―1から12の数字の中の10を指す寸前だった。
「・・・うぎゃあーーーっ!!!
遅れるーっ!!」
早朝からかなりの悲鳴と音。
学園生徒である以上それほどの容赦ない時間厳守であることが悟れるだろう。
皆朝起きたら着替えと歯磨きなど(階ごとに流しがあるため、そこで顔を洗ったりうがいをする)を済ませ、1階の朝食を取るため食堂へ行く。
そこで、時間内に来なければ連帯責任として自身だけでなくルームメイトにも迷惑がかかるのだ。
「うぎゃッ!」
ガタッ!
さらに本日最初の派手にドジを踏んだ音もした。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫・・・だよ・・・・・・」
さらによく起こる早朝でのハプニング。
―今日も浅黄色の髪の少年の慌てた声がした。
◇
最初のコメントを投稿しよう!