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テイルズオブシンフォニア:クラトス過去話(妄想←) [堕ちた行く末] ユアンが去る気配を背中に感じながら、 私は崖下から目が離せなかった。 そこに何かが見える訳でも、 落ちた最愛の妻子を案ずるでもなく、 ただただ、鬱蒼と生え茂る眼下の森に目を 落としているだけだった。 強く握ったままの右手の剣に目をやると こべり付いた赤い血が目に入る。 途端、聞こえる筈のない アンナ"だった"者の最期の断末魔と、 刺し貫いた妙に重い感触が 生々しく頭を駆け巡る。 振り払う様にして剣を手から 引き剥がし、放り捨てた。 カランカランと音を立てて落ちたそれを見ると 足元に見覚えのある者が落ちていた。 アンナに贈ったロケットペンダントだった。 蓋が歪んでいて、蝶番は壊れていた。 拾い上げ中を見ると、中の絵には 幸せそうに笑う2人と私がいる。 「全てが虚しくなった」と、 「どうでもよい」と、 …本当にそう思うほかに この悲しみから、絶望から逃れる術を、 私は知り得ない。 頬を伝う雫を涙だと 理解するまでに数秒掛かった。 理解したと同時に悟る。私は、 悲しみに暮れ、絶望しているのだと。 空を仰ぐと雨が伝う雫を 洗い流す様に降り注ぐ。 …泣く事すらも奪うというのか。 数百年振りの慟哭も、 雷鳴に飲み込まれ消えていった。 ⇒next反省
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