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「自然災害、やむを得ない理由で、どうにもこうにも落ちちゃったら、しかたないですよねー。原因がなにか調べてやり直すか、別の安全な土地を探して組みなおすかするんじゃないでしょうかー」
そう続けたのは料理をみなに配っていた、おさげの娘のほうだった。
「…リゾちゃん、そんなこと簡単にできるの」
黒髪の少年が、まるい目をさらにまんまるくして尋ねる。
「んー、簡単じゃあ、ないですけどー。木を切られて怒ってるものがいるはずなんですよね。その力を借りられたら、って思って。だってせっかく50年逆戻りするんなら、木だってかなりしっかりはえちゃいますよー。自信はないけど、交渉材料にはなりますよー」
「くずれたせいで重い布施や上納が強制されたりしないかな」少年はなかなか現実的なことを指摘する。
「それは少し考えましたが、建物を壊してもなるべく材料を助けたらどうでしょう。このあたりの大工さんがたのお仕事が、もう50年先も途絶えないことになりますから、悪いことづくしでもないんです。礼拝中に天井が落ちるよりはひどいことにならないんじゃないでしょうかー?ひとが生きていてこそのおかねですー」
「それはそうだ」バジルが同意した。「ひとまず、昼餉を食べ終えよう。それから羊を連れてよく現場をみて、それから話さないか」
そうか、この娘は魔術使いだと聞いたっけ。
しかしこのおさげの少女がそんな大がかりな術を使える大魔法使いにはとても見えない。
ザクスには不安がかくせなかった。
しかしほかによい方法も思いつかない。 続く
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