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「あはははは、違うよ違うよ。あの幕家はね、右からふたつまでは床がのべてあるんだ。これはこのあたりの、それぞれのいろんな原因から病気になったりけがをしたりしたひとたちがほとんどだよ。でも歩けるひとは、食事のときはこうやって外に集まってくるんだよ、みんな。」
そう言われてさらに見ると、全員がザクスがふるまわれたものと同じものを食べている、というわけでもないらしい。
匙だけ動かして粥のようなものだけをゆっくりすすっているひともいる。胃腸の調子がすぐれないのであろうか。
「ご挨拶が遅れました。わたしはバジル・ファレル。この医師団のまとめをおおせつかっています」
一同の中から騎士のような青年が進み出て、ザクスに挨拶をした。
「医師団?」
「羊を追って、ってゆってなかったかい」ザクスは思わずタオに聞き返した。
「羊か?羊ならそこにおるぞ」
「めえええええ。ええええええええ」
「…タオちゃん、あんたもお医者さんなのかい?あの料理のあんちゃんも、となりのおさげちゃんも」
「俺は見習いだがな、あんちゃんのほうは薬を調合するのがうまい。おさげのほうは魔術つかいで、薬の届かぬ痛みや辛さを和らげるのが得意だ。どちらも欠かせぬ仲間だ」
「タオさまは闘技場で何百何千というけが人を、さらにはけがを防ぐための体術やけがを癒すための体術を、心得ていらっしゃいます。健康を保つための食事や生活習慣とか。医学書こそまだまだですが、臨床体験は随一ですよ」バジルの言葉には心からの尊敬が感じられた。
いい仲間じゃねえか。ザクスは感心した。
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