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「あの足場は今月だけでも3回崩れてやがるんだ…でもよ、ザクス見てくれよ。この杖も、あの人が使ってるのも、あの人のも、このおいらがこしらえたんだぜ」
「へええ?こりゃ、ふつうの木じゃねえな」
「秋の国にいやってほど生えてくる『タケ』っていう植物なんだ。軽くて強い。それにここをこうすると」
「…おお、なんだこりゃ」
「少しの範囲だけだが、この杖は伸び縮みして、好きな長さで固まるんだ」
タケとタケの継ぎ目に柔らかい厚手の革が着せてあって、ひねりこむと長さが短くなり、継ぎ目を金具で締めこめば革が滑り止めになって固定する仕組みである。
「すげえ、シグル、こりゃすげえよ」
「だろ?!!おいらもけがしてみてわかったんだが、傷が固まるまでは長めにしてかばいたいし、痛みになれりゃ短めにして、どんどん歩いて訓練してえもんなんだ。石工はもう無理だけど、こういう道具や義足をつくったり、ここでタオちゃんに教わった機能回復のための訓練をみんなに教えてえ。けがを治しやすい食べ物や痛みを取り除く湿布のことも広めてえ」
シグルの瞳は「石工になりてえんだ」とザクスに告白した20年前と同じようにきらきらしていた。
「おめえが大工をやるなら、おいらは石工になるよ。ふたりででっかい大聖堂を建てようぜ!!」
「どうすんだよ。俺っちふたりだけでなんとかなるもんでもないだろ」
「建てるひとになるんだ。それで、天井裏に落書きしてやるのさ」…
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