そだてる とある大工さんのお話・2

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「いい方向性だぜ。俺に手伝えることがあったらなんでも言ってくれ」 「おいらは…家になかなか帰れなかったのは、つれあいががっかりする顔をみたくなかったのと、やっぱり若え頃の夢が捨てきれなくてさ。でもあのときサジのだんなに掘り出してもらわなきゃ、この足はうまくつながらなかったかもしれねえんだ。で、タオちゃんに教えてもらった通りに動かなきゃ、歩いたり仕事したりもできなかったかもしれねえ」 「うん」 「あの礼拝堂の現場には戻れねえけど…おいらはそんなふうに誰かになにかを返してゆきてえ。別の夢を育てることで、けがや病気で足腰がうまく動かせなくなったひとたちの、埋もれそうな夢を一緒に掘り出してえ」 「ん?…サジのだんな?」 「あの『じいや』のことだ」タオが笑いながら付け加えた。 少女に対する叱責にしてはやけに厳しかったサジの口調を、青い顔をザクスは思い出した。「…そうだったのか」 「サジのだんなもひとから掘り出してもらったんだとさ。で、やっぱりなにかを育ててえんだと」 「ふうん…」ザクスはあごに手をあてて何事か思いやっていた。 「ところで、天井裏といえばさいぜん」 「ん、なんだいタオちゃん」 「そうだな…梁と梁の突き合せのあたりかな。そなた、上をあおいで『やべえな』と言っておったであろう」 「…本当によくみているねえ。やばいところはほかにも山ほどなんだが…あの天井は特にやばい」 「土の柔らかさがあちこち違うためだろうか」
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