不幸1~始まりは突然に~

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  「…………」 次にを口を開く前に心の中で言っておく。俺は今、目の前の不思議な光景をほんのちょっぴりだが視認した。……いや、不思議という範疇を越えて奇妙だったのだが……。 ありのまま、今起こったことを説明する。「俺は自宅の明かりを点けていたと思ったら、いつの間にか視界に巨大な段ボールが入り込んでいた」。 何を言ってるか分からねーと思うが、俺自身も何が何だかよく分からなかった。目がどうにかなってしまったのかとさえ思った。 通常の物だとか引っ越し用だとかそんなチャチなサイズじゃあ断じてない。もっと恐ろしいサイズの片鱗を味わったぜ……。 「何……なんだ、コレ……」 超弩級サイズのそれに、思わず声が漏れた。何なんだコレは。見た目は段ボール……なのだが、まるで規模が違うじゃないか。人一人が余裕に入れて、尚且つちょっとしたスペースが空くくらいの大きさの段ボールなんて見たことないぞ……。 そもそも、誰がこのデカブツを此処に置いた? 家には鍵が掛かっていたはずであるのに。もしかして、誰かが自宅に侵入したのか? 泥棒? シーフ? 盗人? ……落ちけつ、全部同じだ。 「てか、泥棒だったら、家の中荒らされてるんじゃ……」 ふと気づく。空き巣に入られたかもしれないという可能性に。生活に必要な物が盗まれたかもしれないのだ。こうしちゃ居られない。 俺は思考から一時的に段ボールのことを排除。急いで家に上がり、物が盗まれていないか確かめることにした。 「なんだってんだよッッ……! くそっ……!」 段ボールの横を過ぎ去り、通帳等大切な物が多く置いてある居間へと急いだ。 その刹那、段ボールが少しだけ揺れた。風圧とか振動とかそんなことが原因じゃなく、一人でに。 ……しかし、俺はそのことに気づかなかった。
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