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……で、その五分後。
すべての部屋を見回ってきた俺は、再び玄関――段ボール前に居た。
結果的に、空き巣に入られたような痕跡は無かった。それどころか、人が入ったような痕跡すら無かった。つまり、泥棒の入った可能性は無かったわけだ。
「……泥棒ではなかったか。取り敢えず良かった……」
ホッと息を撫で下ろす。物が盗まれていなくて良かった。やれやれ……。
……まぁ、それは置いといてだ。結局何なんだ、この段ボールは。そもそも誰からの差し金なのか全く検討も付かん。
仕送り……は先週送られてきたばかりだし、誰かから荷物が届く予定なんて無かったし……。それもこんなサイズの段ボールに入るだけのモノなんて、尚更。
差出人も書かれてなかった、ただガムテープで口を封じただけの段ボール。一体誰がこんなものを……。
「開けて……みるか?」
となればもう、この段ボールを開けてみるしか無いわけだ。それ以外にこのよく分からん現状を打開できるような手段もないし、何より、さっきから正体が気になって仕方なかったのだ。
俺はもう一度、五分前と同じような形で段ボールと向き合った。改めて見てみると、圧倒的存在感を放っているな。その存在感はさながら、ダンジョンの奥に潜むボスと言わんばかりの……モノでもないか。
とにかく異様な存在感なのだ。
「…………」
生唾を呑む、緊張の一時。得体の知れないものが入っているかもしれないという恐怖。何て言うか、色々な感情が混ざりあって、複雑な心境です。気になっていたとは言え、いざ向かい合うと開けたくなくなるのもまた事実。
しかし、後に引けない。もう開けるしかないのだ。そっと段ボールに歩みより、その口に風をしていたガムテープを徐々に剥いでいく。そして口を開けば中身を見ることができる状態まで辿り着く。
ここで数回深呼吸。次いで開きかけた口に手を持っていく。
「……よし」
意を決した俺は、開け口を掴み、思い切り段ボールの口を開け放った。
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