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ここはとある日本のとある地方のとある位置に所属するとある街、筑井市(ツクイシ)。都会でもなくば田舎でもない中途半端な街だ。
更に、その筑井市の南部に置かれているとある学校、筑井南(ツクイミナミ)高校。全校生徒約四百人程度の学校である。
その筑井南高校の最上階、屋上にて、とある二人の男女が対峙する形で立ち合っていた。
夕日によって、橙色に染められた白いタイル。とある女子生徒も男子生徒もまた、夕日に染められ白いシャツを橙色に染めていた。
「あのぉ……、私を呼び出した理由って何ですかぁ?」
おっとりとして妙に間延びした声を上げる女子生徒。長く、綺麗なウェーブのかかった栗色の髪を手で弄りながら、目の前にいる一人の男子生徒に問い掛けた。
全国平均より少し高いくらいの身長に、どっちかというと中性的な顔立ち。少しツンツンした髪型以外には取り柄の無さそうな子生徒。女子生徒の前で立ち尽くし、固まったように動かない。
「貴方、二年四組の菅原(スガワラ)君……でしたよねぇ?」
女子生徒に菅原と呼ばれた男子生徒はビクリと体を震わせた。妙にビクビクしていて、今にも逃げ出しそうだった。
……だが。しかし。彼は意を決したように口を開く。
「……道奈(ミチナ)さん、あの……話が、あります……」
が、彼の震えは止まらない。
その震えを止めようと、彼は気付けなのか頬を叩いて表情を引き締め、道奈と呼んだ女子生徒に向かい合う。
道奈はウェーブのかかった髪を僅かに揺らした。菅原の周りの空気が変わったのを察したらしく、表情が引き締まる。
……暫しの静寂。それを切り裂くように、菅原が閉じていた重い口をゆっくりとこじ開けた。
「道奈さん……。俺は、一目見た時から貴女のことが好きでした。その仕草も行動も髪も顔も性格も、全部がオレの好みでした……」
菅原はそこで一度葉を切り、深々と頭を下げた。
「もし良ければ……オレとお付き合い願えませんか!?」
――告白。一世一代の、彼の全てを懸けた、告白。
「…………」
返事は無い。驚いて言葉が出ないのか、呆れ返って言葉が迷子になっているのか、菅原に確認する術は無かった。
だが、彼は待った。自分の想いが届くと信じて、ただ腰を折り曲げたまま、菅原は待った。彼女の答えを。
……だが、帰ってきた答えは、あまりに残酷なものであった。
「ごめんなさい……」
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