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―side 晃斗―
弘が俺の一メートル手前で止まった。そして腕を組みながら再び同じ質問を投げつけてくる。二度も聞きたくなかった質問をだ。
「晃斗、どーだったんだ? 道奈さんとは、上手くいったのか?」
「あぁ、それか……。ダメだったよ……」
あぁ……口にするのも嫌だ。何回もあの「ごめんなさい」をリピートするだけで気が滅入る。できればあんまりその話題は振らんでくれ。
しかし弘はそんな俺の気も知らず(まぁ口にしちゃいないから分かりゃしないだろうが)、真顔でこんなことを言ってのける。
「ほぅ……。それは予想外。晃斗を振るだなんて、思った以上に目が肥えてたんだな、道奈さんは」
「好きな野郎が居るんだとよ」
「へぇ、道奈さん好きな人居たんだ。そりゃ無理だわな。常識的に考えて」
「だよなー……。俺みたいな野郎じゃ駄目だよなー……」
「そうだな。諦めろ」
「……あのさー、もう少し慰めるかなんかしてくれてもいいんじゃねぇの? ほら、“残念だったな”とか“次があるさ”とか……」
「ドンマイ。次があればいいな。……さて、帰るか」
「酷すぎだろ、お前……」
俺、コイツと友達するの、辞めよっかな……。いや、マジで。
「すまん、冗談だ」
「謝るならもう少し悪びれた素振りを見せてくれてもいいんj……」
「よし、帰るぞ」
「…………」
もう、来週からコイツとの友達辞めるわ……。そう考えた金曜日の放課後、五時。
明日から休日だというのに、俺の気は沈んだままだった。無論、それは淡い初恋のせいであった。
嗚呼、恋って辛いもんなんだな……。
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