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想像していた以上に美しい彼女。
しばらく見惚れていて、あまりにも無口な自分に気付く。
…自己紹介しなきゃ。
慌てて名前を言おうとした。
『3-Bの伊吹 颯(イブキ ソウ)君
でしょ?』
開いた口が塞がらないという言葉の意味を、身を持って体感した。
えらく間抜けな表情だったろう。
クスクスと、鈴を鳴らしたような笑い方。
『3-Eに転入した槙 花音(マキ カノン)です
よろしくね』
彼女と出逢って数分足らず、一日分以上のはじめてと驚きを連発したと言っても過言ではない。
「よろしく」
差し出した右手に、彼女-…花音は何の躊躇いもなく手を重ねた。
その日、花音の美しい瞳と神秘的な雰囲気に、重力に従うかのように、引力で引き寄せられたかの如く、恋に落ちてしまっていた。
だが それを自覚するのに多大なる労力と時間とがかかる事になるのだった。
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