橙の音楽室

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それから毎日のように、俺は音楽室に通った。 思えば、花音の音に一目惚れならぬ一聴惚れしていたようなもので。 それを知り合ってから堂々と聞く事が出来るのだから、最高に得した気分。 音だけでなく、花音を取り巻く柔らかい空気もお気に入りだったし、 時間が経つにつれてオレンジに染められる音楽室が好きだった。 ◆◆◆◆◆◆ 「花音…」 『ピアノ教えて?』 ドキリとした。 相変わらずの会話。 花音の勘は100%的中。 『いいよ 颯は音が好きな人だから』 …花音限定で。 それから放課後の音楽室は、花音のピアノ教室に変わった。 ふらりと立ち寄った楽譜コーナー。 "ヨハン・バッヘルベル カノン" 花音を見つけた。 弾きたい。 "聴きたい"ではなく、 "弾きたい"と思った。
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