今宵、生き血を求め

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人間世界でいう、運命とはこのことなのだろうか 白髪の頭に、杖をついた、一人の老人が今、私の目の前に立っている あれからもう、60年 大分、印象は変わってしまったが、愛らしい垂れ目に、彼のチャームポイントだった八重歯に、掠れた声はその当時のままだった 「よこやま、さん…?」 彼は私と目が合うと、瞳を大きく見開いて声を上げた 私たち吸血鬼は、歳は取っても、外見は若い頃のまま、変わりはしない だからだろう。彼がこの私に気付いたのは、 杖をつきながら、ゆっくりゆっくり近付いてくるあの時の少年 人間世界でいう、運命とはこのことなのだろうか たまたま入った古びた骨董屋 この街の資料を探しにきた私の目の前に現れた、恋をした相手 「ずっと、…会いたかった…」 私の腕を掴んで、涙を流しながらそう言った少年 「ずっと、ずっと…待っていたんです」 60年振りに聞く、彼からの゙好ぎという言葉は、やはり私の胸の鼓動を早くして 「私も好きだ…、愛している。…信五」 溢れた感情、やっと伝えれることの出来た、この気持ち 彼の瞳から溢れた一筋の涙が首筋に流れついて、 「横山さ、…やっと一緒に居られますね」 彼はそう微笑んで、瞳を閉じ、私は彼の生き血を吸い、吸血鬼の一生を終えた I'll live with you. (ワタシはきみと生きるつもりだ) Love you tonight. (当夜もきみを愛してる) Whenever you are lost, (きみが独りのとき) I'll be there for you.Never let you go. (ワタシが迎えにいくよ) (これからは、永久に一緒だ) end .
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