君の声しか聞こえない

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寝るのが大好きな僕よりか、ずっと前に起きて、いい匂いといい音を経てながらキッチンで料理を作る君 僕の目覚まし時計は目玉焼きが焼ける音 まだ寝起きで固い身体を起こして、伸びをする。そしてそのまま君が居るであろうキッチンへ、僕は向かうんだ 「おはよう」 白いエプロンをして、綺麗な黒髪を揺らしながら料理を作っている君を後ろから優しく抱きしめれば、ビクっと震えた身体 でもすぐ後ろを向いて、僕と目が合えば照れたように微笑みながら笑った僕の恋人、横山くん 「あ、今日はハムエッグや」 横山くんの白い耳元でそう言えば、くすぐったかったのか身体を動かして手を退かそうとする彼 横山くんは、すごく恥ずかしがり屋で、すぐに顔を真っ赤にしちゃう、可愛い可愛い年上の人 そして彼は、音のない世界で生きている まだ横山くんが幼い時、自分の父親から鼓膜が破れるほど酷い暴力を受けて、聴覚を失った そして、耳の聞こえない横山くんは僕の前に現れた さらさらした黒髪に、透き通った白い肌、見るもの全てを吸い込みそうな黒い瞳、少しつり上がった切れ長な目に、鼻筋の通った高い鼻。その全てが僕を魅了した 耳が聞こえない、そんなことを忘れてしまう程、そんなことどうでもよくなってしまう程、僕は横山くんに溺れた それから僕と横山くんは付き合って、今は半同棲状態 静かだけれど、僕と横山くんの二人だけの世界は、いつも騒がしくて、いつも楽しくて、すごく幸せ .
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