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神崎くんはたまに
投げやりな言い方をする
心ない言葉を平気で吐き捨てたり
時には無関心、無感情だと言い張る
しかし僕達は知っていた。
どんなに彼が冷酷な言動をしても
本心では全く別なことを思い、最善の策を考えていることを
だから僕達一同は神崎くんに
頭が上がらないのだ
「敦」
「な、なに?」
沈黙を破った彼の口から
突然名前が呼ばれたので
どことなく動揺してしまう僕
「今日、久しぶりに一緒に帰ろうぜ」
「…え?」
「たまにはいいだろ」
「なんでいきなり?」
「うっせーなぁ。お前は黙って俺の横歩けばいーの」
そう言って右頬を
むにゅうっと抓られる
「もし神崎くんと一緒に帰ったら、
鈴木くんが一人になっちゃうよ」
「大丈夫だろ」
「なにが大丈夫な…」
キーンコーンカーンコーン
まるで誰かがタイミングを
推し量ったかのように予鈴が鳴る
僕は渋々自席に着いた
――――最近、
鈴木くんの様子がおかしかった
最初の異変は疲れきった表情。
僕はなす術なく
彼になにもしてあげれていない
そして彼はいつも頑なに
『大丈夫だから。そんなに心配すんなよ。
……でも今は、一人にしてくれ』
そう言って追求されるのを拒んだ
僕には何もできないのか。
困ってる親友一人でさえ救えないのか。
悩んで悩んで、また悩んで。
結局は同じ結論に辿り着く
まるでどうにもならない事を
『仕方ないか』と諦める、
悪循環の無限ループ
そんな僕に彼が言った一言は
「本人が放っとけっつったんなら
大人しく放置しとけよ。
お前の価値観をアイツに押し付けんな
少なくともアイツのことは
俺よりもお前の方が
よく知ってるはずだがな」
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