私、イヴ

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なげしの死後、なげし遺伝子「イヴDNA」が、新たな命をこの世に残し、再び悲劇の始まりを作った。 あれから2年、ナインは夏人としての記憶と感情をほぼ完全に取り戻し、ナインとしての性格も能天気さも失われ始めている。 その所為か、物思いにふけ、自分の両手を睨み付けて握り締める事が日に日に多くなった。 夏人: この手は、お前に差し出す為に、お前のヒーローになる為にあった筈なのに……。 なげし……俺はこの手で、何度もお前を殺してきたのか?。 憎悪にも似た悲しみの顔を苦痛に歪め、溢れる涙で握り締めた拳をポツポツと濡らす夏人。 そんな夏人をいつも何かに身を隠し、影ながらシュンと俯いて側で見守り居続ける、フォースの姿があった。 人間の体になってから、まだ能力は宿っているものの、背が伸び、運動神経も人形の頃より劣り始めている。 セカンド: ここに居たんですか?。 夏人。 そこに小さな女の子を抱きかかえ、セカンドが夏人に声をかけた。 女の子をイヴと名付け、全員で山に身を潜め育てている。 夏人は呆っとしたまま、セカンドに振り向き首を傾げた。 イヴ: な~な、なあな。 イヴは案の定夏人になつき、余計に夏人の胸を痛める。 夏人: ……イヴ。 夏人が卑屈に歪んだ笑みを浮かべ、そっとイヴが伸ばしてきた小さな手に触れる。 それだけで夏人の胸が詰まり、息が出来なくなる。 唯一救いなのは、なげしの面影がないと言う事。 だが、いつ「なげし」の遺伝子で、顔付きが面に現れるかわからない。 なげしの面影が覗いたとして、なげしのDNAと記憶が確立されなければ、それは、なげしではなくて……。 セカンド: あ、イヴ、危ないですよ。 セカンドの腕から身をのりだし、夏人に抱き付こうとするイヴに焦りながらセカンドが声をあげた。 夏人: あぁあ゛~。イヴ、危ねーよ……。 夏人が表情をしかめて歪め、ボヤク様に話すと、セカンドからイヴを抱き止める。 イヴ: ふえ(笑)へへへへ、キャアキャア。 なーな、なーな。 イヴが満面にはしゃぎ暴れながら、夏人の頬を平手でペチペチと叩く。 夏人: イヴ、お前、女で在る事に感謝しろよ……。 しかめ面の目を痙攣させ、頬の痛みを堪える夏人。 フォース: ックス(笑)。
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