抱きしめたい

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こんなにも必死になって走っているのはいつぶりだろう。 今日は夜から雨が降ると大好きなお天気お姉さんの言葉通り、今は激しい雨が降る。 ついてないな…そう思う気持ちもなくはないが、今はそれよりも君への想いが足を動かす。 濡れて行ったら迷惑じゃないかとか急に押しかけたら嫌がるんじゃないかとかいつもなら気にして避けていた君の家。 君はいつも気ままに俺の家に来るのに、俺には君の家に向かう事が一番の難関で。 『今は全力疾走だっつうの…』 雨の中走る男性がまさか芸能人だなんて誰も思うはずがない。 ましてや全身びしょ濡れの、見方によっては冴えない男だ。 今はそれがかえって嬉しい。 息が上がってるにしては頭は意外に冴えていて、ふと視界に入った店を見てまた一つ君との思い出が蘇る。 ゙ここマジで美味いから゙ ゙なら今度二人で行こっが 雑誌を見ながら話したお店。 まだ二人で来ていない。 『予約しなきゃな』 別れているはずなのに、どうしてこう楽しい事しか頭に浮かばないのだろう。 それはきっと君が俺のすべてだったから。 離れて気付いた君との距離。 意外にもあったんだと苦しくなった。
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