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天気は快晴にして、季節は夏、時間はちょうど正午を回ったくらいだろうか。
対アビス機関に所属して六度目の夏が訪れていた。
湿度が低いのでじめじめとした暑さではないのが幸いだ。
なんでもここから南東の地、ワコクとかいうところでは、じめじめとした暑さらしいので堪ったものじゃない。
正直なところここの支部に配属されて感謝している。
対アビス機関第五支部の一階、任務明けで冷たい物でも一杯飲もうと手の中には紙コップが二つ。
そう、一つではなく二つ。
「お疲れ様、報告書助かったよ」
正面から歩いてくる白を基調とした制服に身を包んだ小柄な女性。
若干幼さの面影はあるものの端正な顔立ちをしていて、栗色の髪は肩口で切り揃えられている。
華奢で小さな体つきからは想像は出来ないがこれでも自分とは同い年である。
「あー、ありがと」
紙コップを貰うと豪快に飲み始めるあたり、彼女はこの暑さに相当参っていたのがわかる。
「おいおい、ルナ、ちょっとは落ち着い」
「うっ…」
言うまでもなく、少し遅れてきた冷たさにやられていた。
頭を抑えながら隣に座るルナ、暫くして痛みが引いたのか彼女が話を切り出した。
「ねえ、明日空いてる?」
「一応ね、二週間ぶりくらいかな」
「それは良かった。妹が明日こっちに配属されるから、あいつらも呼んで私の部屋でパーティーでもしようかと」
「皆の都合は大丈夫なのか?」
「ええ、もう全員聞いて貴方が最後」
そう言うと彼女はまだ残っていた飲み物を全部飲み干した。
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