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ギャルゲーなんてハマっていると、大抵の女子は引くかもしれない。
俺自身、中学時代はそう思っていた。
ギャルゲーなんて所詮冴えない男子が縋りつくゲームとも言えないゲームもどきだと。
けれどひょんなことからこのギャルゲーが人気を集めているという情報を得て、ゲーマーである俺はすぐに買った。
ゲーマーとしては、人気所は押さえておきたかったのだ。
そしてやり始めると…これが何とも面白い。俺は見事にハマった。
登場キャラクターをほとんど攻略して、あと残るは1人。
夜な夜なやり続け、とうとう全員攻略まであともう少し。
最後の攻略は、俺が一番気になっているキャラだった。
クールであまり群れることのない、一匹狼的なポジションの女の子。
でも協調性がないというわけでもなく、単に1人でいる方が好きだという女の子だ。
こういう煩くない女子が、俺は好みだったりする。
説明書を見たときから気になっており、俺は好きなものは最後に食べる人間のためラストに回した。
イベントもスチルも予想通り最高で、現実にこんな女性がいればいいのにと、とうとう末期症状に差し掛かっている始末だ。
今では世のギャルゲーにハマる冴えない男子の気持ちが痛いほど分かる。
嫁は二次元にいる……か。良い言葉じゃないか。
俺はコントローラーを握り、ロード画面に切り替えた。
テレビから伸びているヘッドフォンを装着する。
昨日の続きからだ。
あと一つイベントをこなせば、エンディングを迎えるのみ。
ああ……湧き上がる興奮が抑えられない。
パラメーターは体力高めで、学力は低め。モラルは高く、性格は陽気という設定になっている。
これが今攻略している女の子…遠巻 菘(トオマキ スズナ)の好きなタイプになる。
『あ……浩太。おはよう』
ヘッドフォンから天使とも思える少し掠れた耳障りの良い声が聞こえてきた。
朝の時間。
クラスが違うので、教室で会うことはできない。
だからこそ菘ちゃんの登校時間に合わせて登校し、下駄箱で鉢合わせになるようにスケジュール調整する。
初めは警戒心もあり名字呼びだったが、今では好感度も最高レベルなので名前呼びだ。
それに菘ちゃんは俺を見るなり、少し頬を染めた。うん…可愛い。
『菘、おはよう!』
『浩太…いつも元気だよね』
菘ちゃんは微かに笑った。
あー…癒されるこの笑顔。
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