ディスプレイの向こう

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『私たちもうすぐ卒業だね…』 しみじみと菘ちゃんが言った。 そう。このゲームは高校1年生から始まり、卒業がゲームとしてのゴールに位置する。 まあ、「ときめ○メモリ○ル」と同じ設定だな。 ちなみに王道ギャルゲーの「とき○モ」はやったことはないが、これが終わったら手を出してみようかと思っている。 最後のイベントはこの卒業を間近にした今日起こる。 卒業を前に、タイムカプセルを埋めるのだ。 まるで小学生のような行為だが、実は彼女はその小学生の行為に憧れている。 理由は、彼女は幼い頃親の転勤で引っ越しばかりしていた。だから友達との思い出がほとんどなく、タイムカプセルなんて埋めたことがないのだ。 その話をしてくれたときの菘ちゃんと言ったら、恥ずかしそうに少しだけ頬を染めて言うもんだから可愛いったらもう……おっと、妄想はここまでにしておこう。 そういうわけで、俺は今日も夜な夜なこの魔性のゲームに勤しんだ。 そして午前3時。 「終わった………!!」 やった。ついにエンディングだ。 ああ…長かった。そして幸せだった。 菘ちゃんマジ天使だよ菘ちゃん。俺はもう末期だ。 このディスプレイを越えて君に会えたらどれだけ幸運だろう。 ああ、画面が邪魔だ。 何度このディスプレイを破壊して向こう側へ行こうとしたことか。 そんなことすればこの俺専用のテレビが使い物にならなくなるけど。 馬鹿なことを考えるほどに俺はこの子に夢中だった。 「それにしても…」 眠い…眠すぎる。 そりゃそうだ。午前3時だもんな… 学校あるし、今日はこれで寝るか。 エンディング見られたから、良い夢が見られそうだ。 俺はベッドに寝転がり、アラームを7時にセットして眠りについた。 すぐに睡魔は襲ってきて、俺はのび○もびっくりのスピードで意識が飛んで行った。 『全エンドコンプリートおめでとうございます!』 ディスプレイに表示されたこの文字。 俺は眠気のあまり、すっかりテレビの電源を落とすのを忘れていた。 何の変哲もないこの画面に、一瞬ビリッと亀裂が走った。 しかし寝ている俺が気付くはずもなく、スース―と寝息を立てる。 そしてまたビリリッと亀裂が走ったかと思うとザーと大きなノイズ音が流れ始めた。 それにも気付かず、寝こけている俺。 丁度その頃の俺は、夢の中で菘ちゃんと手を繋いでいる最中だった。
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