ディスプレイの向こう

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目が覚めると、そこは知らないお部屋でした。 いつも聞きなれているものと違うアラームが頭上で鳴り響き、俺は目が覚めた。 ぼんやりと白い天井を見つめ、次第に覚醒してくる。 鳴り続けているアラームに手を伸ばし、止めようとした。 「……?」 ん?俺こんな目覚まし時計持ってたっけ? 見慣れない時計に疑問を感じつつ、アラームを止める。 まさか母さんが買って来たのだろうか?…いや、無断で部屋に入るなと日頃から言っているし、こんなにコードだらけの部屋、母さんは自ら入ろうとしないはずだ。 だったら何で…… と部屋を見渡すと、いつも張り巡らされているコードが全くなかった。 「…え!?」 更に、あれだけあったゲームもすっかり姿を消している。 「ない…!!」 そもそも、ここはどこだ。 キョロキョロと見回してみても、見慣れない風景。 机や本棚があるが、俺の物ではない。 さっきまで寝ていたベッドだって、昨日まで使っていたものとは別物だ。 そう、俺の知らない部屋だった。 ……知らない? そう断言するには、どうにもこの部屋に親近感を感じてしまう。 何故だろう、ここが初めてだという気がしないのは… なんてごちゃごちゃ考えていると、下の方から女性の声がした。 「浩太ー!早く起きなさい!」 ………誰だ? こんな声、知らない。 でも相手の女性は俺のことを知っているようだ。 っていうか、台詞的には母親のよう。 しかし母親はこんな声じゃ… 「浩太っ!今日は入学式なのよ?早く起きなさいったら!」 …………入学式、だと? そんなものは数か月前に済ませたはずだ。 何を言ってるんだこの声の主は。 意味の分からないことを言う女性に文句の一つでも垂れてやろうと、俺は部屋から出た。 どうやらここは2階のようで、女性は下の階にいるようだった。 階段を下りるとダイニングテーブルが目に入った。 その上にはこんがり焼けた食パンとマグカップに入った紅茶が置いてある。 「あ、やっと起きてきたのね。全く、あなたのお寝坊さんには毎回苦労させられるわ」 呆然と見慣れない風景を見ていると、右隣の方で声がした。 声の方を見ると、そこにはやはり見慣れない女性がエプロンを着けて立っていた。 「…………誰?」 「何言ってんの浩太?頭でも打ったの?」 「いや、だって」 「母親に向かって、失礼ね」 母親…だと…!!?
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