ディスプレイの向こう

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「俺の母親は…まさか、2人いたのか……?」 「何をふざけたことを言ってるの?」 「俺はこれ以上ないほど大真面目なんだけど…」 これは、一体何の間違いだろうか。 知らない家で目が覚めて、知らない母親がいて。 そして終わったはずの入学式の日で。 ぐるぐると同じことを考えていると、自称俺の母親は「全く、まだ寝ぼけてるのかしら」と言った。 「ほら、入学式なんだから早く支度なさい。お母さんは化粧してくるから、浩太は朝ご飯食べて制服に着替えなさいよ」 ちなみに制服はそこに出してあるから、と女性はダイニングテーブルの傍にある椅子に引っかけてある制服を指さした。 そして忙しなく女性は2階へと上がって行った。 制服を手に取り、広げてみる。 「…………!!」 とても、見覚えのある制服が目の前に現れた。 見間違えるはずがない。これは…これは……!! 「私立はなやぎ学園の制服じゃないか…っ!」 きゅんきゅんメモラブルの舞台である私立はなやぎ学園。 まさにその高校の制服だった。 何でこんなものが…まさか、これを来て高校に行けと? 完全にコスプレじゃないか。 そのまま驚きのあまり動けずにいると、化粧を終えた自称俺の母親が目を三角にして「まだ着替えてなかったの?早く着替えてきなさい!」と怒ったので、俺は仕方なく着替えることにした。 決して怖かったからというわけではない。 制服に身を包み、あれよあれよという間に自称俺の母親に連れられ車に乗せられる。 そして気が付けば、学校の前に立っていた。 「間に合ったみたいね…。ほら、浩太。クラス表貼り出されてるみたいよ?親は先に体育館に行くみたいだから…。あなたは自分のクラス確認して、教室に行きなさいね」 確かに、玄関先にクラス表のようなものが貼り出されている。 その前に幾人もの生徒が群がっていた。みんな新入生だろうか。 「はあ……」 「もう、しっかりするのよ?」 いまだ呆然としている俺を見て、自称俺の母親は心配そうにこちらを見て俺の背中をバンと叩いた。 「う…っ」 「それじゃ、頑張ってね」 強烈な背中叩きを食らって、俺はよろよろとクラス表の前へと歩いて行った。 よくわからないが、俺は5組のようだ。 クラス名簿にザッと目を通すと、俺はとある名前を見て鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
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