ディスプレイの向こう

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まさか、東雲 理一までいるとは…… 超展開すぎて、俺の頭は混乱状態。 「で、名前は?」 「……安住 浩太」 「あ、出席番号1番か。よろしくー」 「ああ」 ぐるぐると混乱する頭を回転させ、とりあえず当たり障りのない会話をこなす。 この東雲 理一、実はこいつも「きゅんきゅんメモラブル」の登場人物の1人だ。 主人公の友人ポジションで、攻略キャラの情報を教えてくれる良き友達だ。 攻略本を買っていた俺としては大して必要のないキャラだったが、意外にも登場回数が多かった印象がある。 人当りがよく、主人公が入学して初の友達だったっけな。 それにしても……こうも、きゅんきゅんメモラブルと被る部分が多すぎるとなると… 偶然では言い切れなくなってきた。 そもそも、俺自身見ず知らずの母親の息子になり、受験した覚えのない高校の生徒になっている時点でおかしい。 信じたくない。 信じたくなかったが、これは… 「あれ、浩太!?」 「!?」 もんもんと考え事をしていると、ポンと肩を叩かれた。 驚いて声の主を見ると、そこにも見慣れた女子生徒が立っていた。 「浩太……浩太だよねっ?」 「……もしかして香凛、か?」 「うん!そうそう。よかった、覚えててくれてたんだ。てか、浩太もここ受けてたんだね!」 やっぱりそうか… そういや、これも強制イベントの1つだったな… 主人公の幼馴染である、早瀬 香凛(ハヤセ カリン)。 主人公が中学に上がると同時に彼女は他県へ引っ越ししてしまい疎遠になるが、高校でまた戻ってきた幼馴染と再開する…。 元気で明るく、誰にでも分け隔てなく話す人気者タイプだ。 もちろん、攻略対象の1人であって。 「ここ、知らない人ばっかだからさ…浩太がいてくれてホッとしたよー」 香凛は嬉しそうに人懐っこい笑みを浮かべる。 「俺も、まさか香凛とまた会えるなんて思ってなかった」 「ふふ、私も!ホント久しぶり」 それから二言、三言話して俺たちは指定された席についた。 ここは出席番号順に座るのかと思いきや、さすがゲーム内のご都合主義。 俺は図られたかのように東雲の後ろの席だった。 それにしても……やっぱりここは、ゲームの中らしい。 そう、俺がドハマりしていた「きゅんきゅんメモラブル」の。 あり得ない事態なのに、何故か俺は冷静だった。
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