ディスプレイの向こう

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俺の夢ならば、ここで攻略キャラみんなひっぺがしてあんなことやこんなことをするが……おっと、失礼。つい下品な思考に至ってしまった。 でも、夢にしてはあまりにもリアルすぎる。 ここがゲームの中の世界…だとしたら。 俺は何とかして、現実世界に戻らなければならない。 ……ふっ、なんてな! 何で俺がこんなことになってるのかは分からないが、せっかくこんなに美味しい状況になってるっていうのにみすみすこの機会を逃してたまるか! 俺は女キャラを攻略する。もちろん、俺の一番大好きな菘ちゃんをだ! この学園に存在するかどうか分からないが、こうも”きゅんメモ”のキャラクターが揃っているとなると、望みも薄くない。 まさか3次元の菘ちゃんを攻略できる日が来るとは…! 「…安住、すっげー悪い顔してんぞ」 いつの間にか後ろを向いていた東雲が、少々引き気味に言った。 俺は瞬時に表情を真顔に戻す。 「何のことだ?」 「思い切ったおとぼけ精神だな」 「ほら俺、少々おちゃめなところあるから」 「ぶっ!!」 俺の真顔な切り返しに、東雲は噴き出した。 「あっはははは!お前面白いなー!」 「そういう東雲は爽やかさ全開だけどな」 「え、俺爽やか?」 「うん。好青年」 「マジ?サンキュー!嬉しいわ」 ゲームでやった通りの人物だ。こいつとなら仲良くやれそうな気がする。 高校に入ってろくに友達を作らなかった俺だが、ゲームの中だと思うと気分も楽になる。 現実世界じゃ、いわゆる俺はコミュ障ってやつだ。上手く人と話せない。 ゲームばっかしてきた所以なのかもしれない。 「なぁ安住、」 東雲は耳打ちするように顔を寄せてくる。 …知ってる、このシーン。 お友達ポジションの東雲が、女の子の情報をくれるようになるきっかけイベント。 「ここの女子って…、レベル高いと思わないか?」 「レベル?」 「うん。美女揃いっていうかさ…」 「あー…確かに、そうかもな」 この返しは主人公テンプレの発言。 こういうゲームでの暗記は本当に天下一品なんだがなぁ… 何で勉強には生かせてないんだろう。 「安住は、気になってる子いる?」 「俺は……いや、今はまだ特に」 ここで雨宮さくらや早瀬香凛の名前を出すと、若干2人寄りのルートになるから、ここは我慢だ。
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