ディスプレイの向こう

11/16
前へ
/163ページ
次へ
「まあ、まだ高校始まったばっかだしそうだよなぁ…。俺もまだこのクラスしか知らないし、後でちょっと他のクラス覗きに行かないか?」 「他のクラス?」 「そうそう。ほら、やっぱり可愛い子とお近づきになりたいじゃん?」 「そうだな…。行ってみるか」 「お!ノリがいいね安住っ」 東雲は楽しそうにニカッと笑った。 爽やかそうな顔して、やっぱ年頃の男子ってのは異性に興味あるもんだよな。 俺も一見興味なさそうな顔だが、やっぱり女の子は好きだ。 「俺こう見えてもさ、中学時代は結構女子の情報収集得意だったんだよ。安住も気になる女子いたら、俺に言えよ?良い情報仕入れてくるからさ!」 「東雲…お前何てイイ奴なんだ」 「よせやい」 女子にしてみればいい迷惑だが、男同士ってのは所詮こんなもんだ。 東雲は良い戦友だ。 そうこうしているうちに、入学式が始まるからと体育館に招集がかかった。 入学式で印象に残っているのは、新入生代表の挨拶だ。 入試をトップで合格した才女、水無月 麗子(ミナヅキ レイコ)はその名の通り美麗で、才色兼備な学校中の憧れの的だ。 しかし彼女は隠れオタクで、その事実を誰にも知られないようにしている。 まあ…攻略キャラの中じゃあそこそこエピソードもよかったが、やはり菘ちゃんには敵わない。攻略は除外だ。 「いやー…挨拶してた学年トップの女子、すっげー綺麗だったな」 入学式終了後、俺たちは教室に戻る。 隣を歩いている東雲がほう、と感嘆のため息をついた。 「なんだ東雲、惚れたか?」 軽いジョークのつもりで言うと、まさか、と東雲は案の定首を横に振った。 「ありゃいくらなんでも高嶺の花ってもんでしょ…。俺なんか、釣り合わねーって」 アハハッと東雲は笑う。 そういうわけでもないんだがな…彼女のコンプレックスであるオタクの部分さえ受け止めれば、水無月は案外コロッと落ちる。 なんて事実は、この世界で知ってるのは俺ただ1人だろうな。 教室に戻ると、担任が入ってくる。 「今日は必要な資料だけ配って解散だ。自己紹介は明日朝一でするから遅れるなよー?」 自己紹介か……。この入学直後の自己紹介は好きじゃない。 何故かウケを狙わなければという使命感を持って自己紹介する男子がたまにいるが、俺にはあれは無理だ。 誰の記憶にも残らない自己紹介…これが一番いい。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2499人が本棚に入れています
本棚に追加