ディスプレイの向こう

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結局、俺の自己紹介は本当に何の印象も残さない平凡なもので終わった。 そして今日は解散となる。 「よし、行くぞー安住!」 東雲が元気いっぱいに振り返る。 「そうだな」 俺は鞄を持って立ち上がった。それに続いて東雲も立ち上がる。 「手始めに1組から回ろうぜー」 「おう」 菘ちゃんのクラスは3組。 この他クラス訪問イベントで、ようやく俺は菘ちゃんとの初対面を果たすはずだ。 逸る心を抑え、俺と東雲は教室を出た。 1組、2組の訪問を終える。 「どう安住、収穫あった?」 「何とも…」 「だよなぁ。俺もピンと来る運命の人はいなかった!」 「それただの一目惚れじゃないのか」 「ま、そうとも言う」 俺の大好きな菘ちゃんは、外見のみならず内面でさえもパーフェクトなんだ。まさに理想の女性。 一目惚れでなんて片付けられるものじゃない。 いよいよ俺の脳内思考が気持ち悪い。 妄想するぐらい良いだろ…。それは個人の自由だ。 とうとう3組の番が来た。 俺たちは教室の外から女子を物色する。 「……あ、遠巻じゃん」 「!!!!!」 隣の東雲が、お目当ての人の名前を呼ぶ。 その瞬間、俺の鼓動は大きく脈打った。 「遠巻って?」 もちろん知っているが、この世界では初対面。 俺は菘ちゃんがいる方を見ないようにして、東雲に尋ねる。 「あー、同じ中学だったんだよ。それだけ……おーい、遠巻!」 クラスにいた一人の女子がこちらを向いた。 そう…あの方が、愛しの菘ちゃん!! やばい、二次元でも可愛いけど三次元にしても全く問題なし! むしろ現実味が増してなお良し! 「東雲くん……どうしたの?」 ああ…っ、声もそのままだ…!耳が幸せだ。 「いやぁ、ちょっとクラス見て回ってたんだよな。そんで知り合い見かけたから、つい」 「そう…」 そして菘ちゃんは、その綺麗な瞳をこちらに向けた。 またしても俺の鼓動が大きく跳ね上がる。 「あ、こいつは同じクラスの安住ってんだ」 「よろしく…」 平静を装いながら、俺はペコリとお辞儀する。 菘ちゃんは「よろしく。私は遠巻って言います」と律儀に返してきた。 可愛い…… ファーストコンタクトはこれで終了。 まあ初めはこんなもんだ。仕方ない。もっと話したかったけど。 「―――で、どうよ安住。気になった女子いた?」 全クラス回り終えた後、東雲が尋ねてきた。
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