ディスプレイの向こう

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「まあな」 俺はそれとなく、シレッと答える。 すると東雲は目を輝かせて食いついてきた。 「え、マジ!?だれだれ!?」 「そうだな……遠巻さん、とか」 ここはあまり言いたくないが、ここで正直に言っておくと東雲は全面的に協力してくれるようになるため、言うのが良い。 「遠巻か…っ!でも、安住が気になるのはよく分かるぜー。可愛いもんな」 東雲はうんうんと頷く。 「なんていうか…俺のタイプだった」 「安住はああいうのがタイプか…。まあ、俺は反対しないね。遠巻ってちょっと取っつきにくいけどいい奴だし」 「そうなのか」 東雲は俺の肩をポンと叩く。 そしてニッと笑った。 「話すきっかけとか、俺に言ってくれれば作るからさ…遠慮なく言ってくれよ」 「お前…いい奴だな」 今日会ったばかりなのにまるで昔からの友達のように接してくれる。 ゲーム上そういう設定にされているのは分かるが、こいつのコミュニケーション能力はどうなってるんだ。俺には到底真似できそうもない。 すると東雲は俺から目を逸らし、頬をポリポリ掻いた。 「あー……。安住ってさ、初めて会った気がしないんだよな」 「…え?」 「ああいや、こっちの話!安住に近しいシンパシー感じちゃったからさ、仲よくなりたいなーって思ったんだ」 「………そうか…」 さっきの台詞に、俺は疑問の念を抱く。 この場面でこんな台詞…あったっけ? 「いい奴だな」という言葉の後には確か、「よく言われる。……なんつって」と調子よく答えるはずだ。 …バグ、か? 「なあ安住、この後すぐに帰るか?親とか待ってる?」 「…いや、親とは別々に帰る予定だけど?別に特別な用もない」 「お。じゃあ親睦も深めて、今から遊びに行こうぜ!」 ……?こんなイベント、なかったはずだ。 まあでもよく考えたら、ゲームで描かれていない日常の部分も俺は過ごすことになるし、これもゲームで描かれなかった一部分なのかもしれない。 普段の俺なら帰宅してゲームをするために丁重にお断りさせていただくところだけど、東雲とは仲良くなっておく方が得策だ。 俺は頷いた。 「おう、いいぞ。遊びに行くか」 「おし、ナンパ成功」 「なんだそれ」 プッと笑うと、東雲は嬉しそうに俺の肩に腕を回してきた。 「よーし、ゲーセンに行くぞー」 「いいなそれ」 俺にとっては本業だ。むしろゲーセン以外考えられない。
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