ディスプレイの向こう

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「すげぇ……すごすぎる安住!!」 「コツ掴んだら簡単だぞ?」 「いやいや、相当やりこんでるだろお前!」 東雲とゲーセンへ繰り出し、シューティングゲームをしている。 対戦しようぜ、なんて俺に持ちかけてきたが最後、こてんぱんにしてやっている最中だ。 俺に勝負を挑もうなんざ、100年早い。 「勝負にならないぞこれ…」 俺が完封した後、東雲はがっくり肩を落とした。 「いい線いってたけどな」 「く…っ!この上から目線腹立つ!」 東雲はビシッと俺に指を差した。 「次は音ゲーで勝負しよう!俺、音ゲーは割と得意な方なんだ」 「ああ、やるか」 割と…ねぇ。 東雲にとって“割と”とはどの程度か知らないけど、割と得意なら恐らく俺はかなり得意の部類だろうな。 そして。 「なあ…お前、音ゲーも得意なの?」 案の定というか予想通りというか… 俺の圧勝だった。 確かに得意と言ってるだけあって、人並み以上ではあった。 でも俺を前にするとそれも霞んでしまうほど、俺は得意だった。 「音ゲーも…っていうか、ゲームは全般いける」 「マジ?」 「俺ゲーマーだから」 「………俺もそこそこゲーマーだと自負してたけど、安住を見るとゲーマーだなんて言えないレベルだわ…」 東雲は自販機でジュースを2本買うと、俺に1本渡してきた。 「……ありがとう」 「炭酸でよかった?」 「ああ」 こういうことをサラッとできる辺り、人当りの良さを感じる。 俺には到底できそうにない。 ベンチに座り、プシュッと音を立ててジュースを開ける。 ゲーセン特有の、がやがやとして煩いゲーム音をBGMに、俺たちは肩の力を抜いた。 「…久しぶりにゲーセンに来た」 「え、そうなのか?相当やり込んでる感じだったから、てっきり毎日でも通ってんのかと思ってた」 「普段は家でやってるから。こういうところにはあまり来ないな」 「へぇー…。意外だな」 そもそも友達と呼べる存在がいなかったから、こういうところに行こうという気すら起きなかった。 家で黙々とゲームをする方が、よっぽど有意義だったし。 「な、今度安住ん家行っていい?」 「え?」 「どんなゲームあるのか興味あるし、やりたい」 そんなこと言われても… あの家は俺の家であって俺の家ではない。 いつも広がっていたゲーム機のコードはあの部屋にはなかった。
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