【リク5】中学校の同窓会

2/17

2497人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
見慣れた住宅街を歩く。 ここは、俺の生まれ育った街。 辺りは夕闇に溶け込む直前。 この時間帯が一番目が慣れない。 そんな、俺が歩く方向の先数十メートル。 バス停で携帯を片手に立っているシズの姿を見つけた。 小奇麗な長袖ワンピースで、髪はアップにしている。 「あ、輝ー!こっちこっち」 幼馴染であるシズが、俺に気が付いて手を振った。 俺もそれに応えるように、手を振り返す。 「輝、本当に和華たちの言う通りにしたんだね…」 近くに来た俺をマジマジと見るなり、感心したようにため息をついた。 「まあ……あいつらに逆らうとろくなことないしな」 「……ふふ、確かに。でも輝、無理にそんな格好しなくても良かったんだよ?輝は女の子なんだから…」 そんな格好、というのは、スーツ姿だ。それもメンズの。 別に俺が好んでこの格好をしているわけではなく、和華と小海がどうしてもというのでこの格好になった。 あいつらの企みそうなことではある。 今日は、中学校の同窓会。 今までも何度かお誘いはあったが、予定が合わなくてずっと参加していなかった。 それが今回は、たまたま時間が合って。 何年ぶりになるだろう、俺はもう今年度でハタチだ。っていうか、どうせ成人式で顔を合わせることになるのに…この時期に同窓会とは。 「はは……。まあ、中学時代の知り合いは…こっちの姿のがしっくりくるだろうけど。それに和華いわく、二次会前には女の姿にするってよ」 一次会はホテル、二次会は居酒屋とのことだ。 こういうときって、服装に困るよな。 「何それ、お色直しみたいな?」 「そんな感じらしい」 「…もう、和華も小海も、輝で遊びすぎ。おもちゃじゃないんだから…」 ぷんすかと、俺のために怒るシズに俺は「いいよ別に」と苦笑した。 「今の生活もほとんど男みたいなもんだし、むしろこっちの方が楽だな。もし女の格好して来いって言われても、どうすればいいか分からない。お色直しのときは和華たちが協力してくれるみたいだから」 服も準備すると言って張り切っていたし、任せっきりでいいだろう。 「…輝、嫌なことは嫌だってバシッと言ってね?」 「ああ、そうする」 丁度そのとき、バスがやって来た。 和華と小海はいち早くホテル近くの繁華街に行っているらしい。ショッピングしたいんだとか。 「じゃ、行こっか」 「そうだな」 俺たち2人はバスに乗り込んだ。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2497人が本棚に入れています
本棚に追加