【リク5】中学校の同窓会

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森本はぐっと言葉に詰まり、そしてため息をついた。 「はあ……お前の天然タラシっぷりも健在なんだな」 「何だよそれ」 「お前、俺ら男子の中では有名だぜ?台詞を吐けば人を落とすって」 どういう言い草だ。 森本はやれやれ、と首を振った。 「俺もまだまだ勉強が足りねぇな。今日は坂月を参考にさせてもらうわ」 「参考にすることでもないだろ」 「まずは外見から。その眼鏡、最高にイケてるから俺に貸せ」 「ちょっと森本!輝くんの眼鏡チョー似合ってるんだから、あんたには勿体ない!」 途端に周りの女子から罵声が飛んできた。 ひでぇ 「うっせえ!……ったく、今日は気合い入れて髪もセットしてきたのにお前のせいで惨敗だぞこの野郎」 「何か………ごめんな」 「謝られると余計に惨めなんですけど!」 『皆さん、お久しぶりです。今日はお集まりいただきありがとうございます』 ワーワーと騒いでいると、スピーカーから男性の声が聞こえて来た。 みんな一斉に前の方を見る。 スタンドマイクのところに、人が立っていた。 あれはもしかして…… 「よっ!幹事!」 「がんばれよ谷川ー!」 『うるせー茶化すなお前ら』 男子たちに声をかけられ、冷ややかに返した。 やっぱり、あれは谷川だったのか。 中学時代よりも身長が伸びて、あどけなかった顔もすっかり大人びている。 「あら、化けたわね」 和華が俺の隣で感心したように口を開いた。 「ただの小生意気な男子中学生だったのに。輝よりも背高いんじゃない?」 「多分な」 「そして輝に玉砕した人」 「それは言うな」 確かにそうだけども。 和華はニヤニヤ笑った。 「っていうか…私、まだ聞いてないんだけど?」 「何を」 「輝と谷川のエピソード。いつか話すって言いながら、全然話してくれないんだもの」 「あー……」 そういえばそんな話もしたっけ。 だって、何だかんだ今となっては笑い話になるかもしれないが、谷川にとっては大事な恋の話だ。 それを俺が大々的にお笑い話として話すのは、さすがにどうかと思う。 『えーっと……気を取り直して。では、今から同窓会を始めていきます。まずはお世話になった我らが恩師の方々の入場です』 扉が開き、先生方が入って来る。 おお……老けたな。5年経ったわけだし、こんなもんなのかなー なんてボケっとしながら思う。
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